Rep.15 三菱重工飛島工場 H-2B見聞記
22:37 2009/05/3記

 以前より簡易版となりますが、久しぶりにこういう形式でのレポートを書いてみます。
 ココログのブログは小さい写真しか載せられないからいけない。ここでは気兼ねなく大きいやつをアップ。

 旧聞になりますが、今年09年2月12日に飛島にある三菱重工の工場へ行って、H-2Bロケットの見学をしてきました。飛島というのは愛知県の南西の端、木曽川河口にある広い土地です。
  
ココ。

 H-2Bというのは、従来日本で使われていた大型宇宙ロケットであるH-2Aのエンジンを二つに増やしたもの。寸法がちょっと大きくなり、打ち上げ能力が四割ほど増えました。
 寸法で言うとAよりも3メートル伸びて、1.2メートル太って、85トン重くなった計算。
 宇宙ステーションISSに日本製の補給機HTVを打ち上げる能力を持つこと、を前提として開発されました。
  

 工場内には防塵服を着てエアシャワーを浴びてから入ります。
 宇宙ものはゴミを嫌うので、この辺の手順はどこでも同じ。
  
 入るとこのようにご対面。
 ノズルにかぶせられているのは秘密保持の目隠しではなく防塵マット。

  
 補機部分は楕円形のカバーの中に収められます。
 肋材の間から中身が見えていますが、打ち上げ時にはここも塞ぐとのこと。

  
 ここでやっているのはタンク部分の製造と、最終組み立てです。
 液体ロケットエンジンを開発するのは宮城県の角田にあるJAXAの施設。厚肉タンクを用いた燃焼試験は秋田県の田代にある三菱の施設。製造は愛知県小牧市の三菱の工場。そして組み立てがここ。
 さらに実機型の燃焼試験は種子島でやります。
 JAXAサイトのこの辺に詳細があります。

  
 打ち上げシーケンス。
 静止遷移軌道の「遷移」というのは、静止軌道まで届く感じの軌道ですよ、という意味。なぜそんな回りくどい言い方をしているかというと、遷移のつかない「静止軌道」に入るのは、乗っかっている衛星の仕事だから。ロケットの仕事は遷移軌道までで、そのあとは衛星が自分でエンジンを噴かして(アポジ噴射または遠地点噴射と言います)目的の軌道に入るわけ。
(現用のLE-5Bは、単独で軌道投入も可能ですが)。

 ここから三枚は工場内に張ってあった仕事風景の写真。
 ロケットは軽量化のためにアルミの一枚板でできていますが、そのままでは強度も断熱性も足りない。そのためにまず、削り出しでアイソグリッド構造という補強構造を作ります。
  
  
  

 そして円筒形に整形してから外側に断熱用のウレタンフォームを噴き付けます。
 H-2Aロケットは白・オレンジ・黒がイメージカラーとして定着していますが、あのオレンジはペンキを塗ってるわけではなくてこの断熱材の色。硬さはかなりのもので親指で体重をかけてもへこみません。バルサより強いぐらいの感じ。
 新品は明るいオレンジ色ですが、時間がたつと暗い色になります。

  

 ロケットの形式番号で、補助ロケットの本数などが分かります。
  

  
 これは気蓄器。チタン殻の上にカーボンファイバを巻いたもので、中に高圧のヘリウムガスを入れます。そのガスでアクチュエータを動かしたり、二段ロケットタンク内の燃料を押し出したりする。

  
 二段ロケットLE-5B。
 LE-7系とLE-5系はノズル径がたいして変わらないので、素人目にはどっちかわからなくなったりしますが、根元のところに二段燃焼サイクルのゴチャゴチャした配管のあるほうがLE-7系、がらんとしているほうがLE-5系です。
 こいつは真空に近い高空で燃焼することしか考えられていないので、一気圧の地上で燃焼するとノズルがぺしゃんこに潰れてしまうそうです。

  
 輸送工程。実際に見てみたいですね。

  
 二段の構造図。

 以下二枚は工場内のパノラマ写真です。
 マイクロソフトICEで合成。
  

  



(文責:小川一水