Rep.13 イスパニア帆船ビクトリア号見学記
2005.6.7見学 同日記
写真13-01 名港ガーデン埠頭のビクトリア号
第三遊水池のレポートの数々は、実は取材ではなく単に見学しただけのことも多い。今回もそうなのでちょっと恥ずかしいのだけど、まあいいや細かいことは言うな、スペインからやってきた本物の帆船の見学記。
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「導きの星」の主人公の船を、ビットリア号という。これは本編では確か書いていなかったと思うが、Vittoriaというのが正式なつづりである。他でもない、フェルディナンド・マゼランが世界一周に乗り出した船だ。しかし彼は死に、部下のエルカーノ率いるわずかな生き残りだけがセビリアに戻って大望を果たした。
今月、愛知万博の一環として復元船のビットリア号が名古屋港へ来たというので、さっそく行ってきた。けれども名前はビクトリア(Victoria)号だそうである。海外サイトをググるとビットリアでもビクトリアでもヒットするので、ビットリアがスペイン語なりなんなりのつづりであろうと見当はつくが、確認はしていない。
写真13-02 大人気のビクトリア号
東京公開時の他人のレポートでは、がらがらの空き具合だと書かれていたので油断していた。11時17分にガーデン埠頭についたら、これがまあ大混雑。11時に公開だから余裕で間に合うと思ったのに……。列に並んでいるのは主にお年寄りで、それも帽子にモリゾー・キッコロのピンバッジをつけた万博制覇組が多い。若者も来ようよ。
結局、乗れたのは12時30分だった。
写真13-03 防舷の様子
木造船がコンクリートの岸壁につけられて壊れないんだろうかと心配だったけれど、タイヤと防舷材で保護されていて納得。
写真13-04 パレル(帆桁環)
ベアリング状の構造で重い帆桁を上下に滑らせる仕組み。調べたらこういう名前だった。
この帆柱と帆桁は残念なことに鉄柱。スペインには樹齢何年以上の木の伐採を禁じる法律があり、やむをえず鉄で代用した、とは案内の日本人クルーのお兄さんの話。
写真13-05 メインデッキ
このデッキはかなり露骨に中央部が高く、両舷が低くなっている。それに左右の手すりの基部にスリット開いているので、大波が入ってもすぐに流れ去る。
乗っていると揺れる揺れる。ほとんど凪だったのに。外洋へ出たらさぞかし恐ろしい揺れ方をするのだろう。
写真13-051 船倉
甲板から下は船倉で、クルーの居住区になっている。覗いてみると意外に小奇麗に内装されていた。
写真13-06 舷側、手すり上の板
コールタール塗りのベニヤ。ベニヤなんて安っぽい物を使ってるなと思ったけれど、帰ってから調べたらベニヤは古代エジプト時代からあるそうで……あまり馬鹿にもできないのだった。
写真13-07 メインデッキの船首側
ロープだらけ。帆船ってロープで動いてるようなものだしな。
錨の手動巻き上げ機があったので、例のお兄さんにキャプスタンですよねと聞いたところが「キャプスタンって何?」と言われてしまった。帆船に乗っててキャプスタンを知らないなんてことがあるわけがないので、これはあしらわれたかと思ったけれど、もしかしてスペイン語で覚えている人だったのか?
写真13-08 メインデッキ船尾側
向かって左上の明るいほうが船尾。画面右上から右下に降りて左上へ向かっているのが舵。舵は甲板を貫通して、上のクォーターデッキ上に生えている。
16世紀を模した航海中の食料や道具が置いてあったけれど、暗くてよくわからず。
写真13-09 コールタール
船体修理用のコールタールが鍋に入って置かれていた。触るとカチカチ。展示物というよりは、実際に使っていたものらしい。
写真13-10 ビルジポンプ
メインデッキ後端にぽつんと生えている。船底から水をくみ出すポンプ。
写真13-11 ティラー(舵柄)
クォーターデッキの床から生えている。写真13-08の真上に当たる。てこ部分はボールジョイントになっているらしいけれどよく見なかった。後で考えたが、これ、直進を保持するためにはずっと持っていなきゃいけないんじゃないか?
写真13-12 ?
さあ、これはなんだ?(笑)
実はこれはスロットル。もしくはテレグラフか。とにかくエンジンの前後進を制御するもの。復元ビクトリア号はエンジンがあって、凪のときや出入港時はそれを使うのだった。クルーに聞いてちょっとがっかりしたよ……。
写真13-13 船長室
クォーターデッキから扉をあけて入る船長室。クルーのサービスだろう、中世風の武具が展示してあった。
写真13-14 無線機
船長室にはVHFの無線電話が。
写真13-15 船尾楼の上から甲板を見下ろす
この位置からだととても大きく感じられた。
写真13-16 帆布
ごわごわしてほとんど吸水性のなさそうな布地。おそらく現代の合成繊維。
写真13-17 なぞの円盤
艫で発見。さりげなく革をかぶせられていた、GPSとインマルサットのアンテナ。
写真13-18 デッドアイ
死人の目という名前の三つ目滑車。この辺りは昔ながら。
写真13-19 艫
船長室の窓が見える。
この船はコールタールを塗りたくって真っ黒にしてある。思ったよりずっと黒い、というのが第一印象だった。見終わった後では、小さいけれどしっかりしているというのが感想。
実を言うと、そもそも私が帆船に興味を持ち出したのは、大航海時代オンラインというゲームを始めたからだ。ビクトリア号はキャラックという種類の船である。スペインではナオと呼ばれる。どちらもゲーム中に出てくる。その実物が名古屋にやってくるというので見る気になった。
ビクトリア号のスペックは全長25.9m、全幅6.72m、排水量170tだそう。排水量って軍艦の計測単位じゃなかったっけ? 確かなんだろうな、この数字……。
同じ帆船でも、カティサークや日本丸などに比べると、とてつもなください。ださいけれどこの船が遠洋航海船の祖なのだ。(鄭和やバイキングやポリネシア人の航海技術は、後世に進化しなかったから)。その意味で生きている化石としての威厳があった。
と同時に、とても素朴だった。なんだか俺でもその辺の材料で作れそうやんか、と思っちゃったよ。
ここまで書いておいてなんだけど、神戸にも帆船のレプリカがあるということを知った。コロンブスのサンタマリア号だ。もっと詳しいレポートが書かれている。帆船の知識のある方らしい。
○「復元船サンタ・マリア(神戸市)」(林蔵さんという方のサイト)
ところがこれを読んでいると、ひどい記事にぶつかった。
○朽ちゆく友好船(復元船サンタ・マリア)
せっかくスペインから来た船が、神戸で腐ってしまっているという。
もったいない、なんとかならないかと思ったけれど……。
○大雑記帳(kowaさんという方のサイト)→復元船→サンタマリア(神戸)
しっかり修理されていた。ひと安心。
さて、ビクトリア号は今日から8月5日まで名古屋で一般公開される。
○公式サイト
場所は名古屋港ガーデン埠頭。名古屋駅から地下鉄桜通線で久屋大通に行き、名城線に乗り換えて名古屋港駅へ。(わざわざ書くのは、名古屋駅で私たちが迷ったから……)。
月曜定休、入場無料。時間は午前の部が11時半から13時半までだが、行列ができると途中で列を打ち切る。午後の部が14時半から17時半まで。たぶんこちらも遅れると見られない。
平日ひまな方はどうぞ。